人は、何も所有することが出来ません。
この世界においては、すべてが変化の中に存在しているのです。
すべてが流転し、決して安定することはありません。
この世界は不安定なものなのです。
すべての人は未熟に生まれます。
未熟さは偏見と誤解を生じさせます。
そのため、すべての人は認識を歪(ゆが)めるのです。
歪んだ認識は、理(ことわり)に反します。
それは、人に何かを所有することが出来ると思い込ませるのです。
この世界においては、人は何も所有することが出来ません。
それは、水のように、指の間をすり抜けてしまうのです。
飲み込んでも排出されます。
生命にとって最も大切な酸素も、吸えば吐き出さなければならないのです。
あなたは何一つとして、所有することは出来ないのです。
しかしながら、何かを所有することが出来ると考えるのが人間です。
未熟さ故(ゆえ)に、そう考えてしまうのです。
それは、この世界と自分自身を隔(へだ)てる矛盾です。
矛盾に阻(はば)まれることによって、人は苦悩を得るのです。
大切なのは、自らの抱える矛盾に気が付くことです。
そして、矛盾を手放すことなのです。
矛盾を手放すためには、矛盾の原因である考えを手放す必要があります。
それは、何かを所有することが出来るという考えです。
どのような満足も、一時(いっとき)のものに過ぎません。
誰一人として、満足を所有することは出来ません。
満足は、やがて色褪(いろあ)せてしまいます。
そして、すぐに不満が訪(おとず)れるのです。
誰一人として、同じ満足を継続することの出来る者はいません。
満足を継続するためには、変化を受け入れなければならないからです。
それは、所有を手放すということなのです。
満足を手放し、不満を手に入れることこそが、満足を継続するためには必要なことです。
満足と不満の繰り返しによって、人は満足を継続することが出来るのです。
すべてが変化の中に存在している以上、所有は実現しません。
そのため、あなたはどのようなものに対しても、それをいつでも手放すことが出来るようにしておきましょう。
それが、どのように大切に思うものであったとしても、それに固執(こしゅう)してはならないのです。
手に入れることと、手放すことは一対(いっつい)です。
人は、手に入れ続けることも、手放し続けることも出来ません。
人生は、手に入れることと、手放すことの繰り返しなのです。
それで良いのです。
変化の中にこそ豊かさは実現します。
吸い込んだ酸素を手放したくないと意地を張れば、命を失ってしまうのです。
それは、賢明な選択ではありませんし、豊かさでもありません。
手に入れたものは、いつか必ず手放さなければならないということを覚えておきましょう。
人は、一時を楽しむ以外には、人生を豊かにする方法はないのです。
何かを所有するという考えは傲慢(ごうまん)です。
それは、人を不幸に導きます。
あなたは満足を所有することが出来ません。
しかしながら、それを継続することは出来ます。
この世界に存在する何にも固執せず、それを賢明に手に入れ、賢明に手放しましょう。
あなたのものは一つも存在しません。
あなたは、何も所有せずに生まれました。
それは、何も所有することなく死を迎えることを意味しているのです。
身軽でありましょう。
それは、純真であるということです。
変化の中を生きて、この世界を楽しみましょう。
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