理想を掲げる人は、理想を実現したいと考えます。
理想を実現したいと考える人は、理想を実現するための計画を立てます。
計画を立てた人は、計画通りに事が運ぶことを理想とします。
理想を掲げる人は、理想を抱えるのです。
理想を掲げることは重要です。
理想を掲げることによって、人は行為と経験を得ることができるからです。
理想を掲げることがなければ、人は何の経験も得ることができないでしょう。
人は、理想のために行動し、理想のために心を働かせるのです。
理想を掲げることがなければ、行動も心の働きも乏しいものとなるでしょう。
しかしながら、理想は実現しません。
それは、思うようには実現しないのです。
理想はあなたを裏切り続けるでしょう。
あなたに把握される程、現実の動きは単純なものではないのです。
現実には、単純な様々なものが複雑に動き、絡み合っているのです。
あなたの理想がそのままの形で実現する程、現実は単純なものではないということを覚えておきましょう。
多くの人は、物事の表層を気にしています。
物事の表層は単純です。
例えば、人の浮かべる表情は単純です。
その数は筋肉の可動域に限られているのです。
しかしながら、心境は複雑なものなのです。
目に見える表層は単純であり、目に見えない深層は複雑なのです。
(本来は、単純と複雑の層は幾重にも存在し、最終的には単純です)
多くの人は、理想が実現すると考えています。
それは、物事が見たままに単純だと考えているからです。
多くの人は、目に見える部分をすべてだと考えているのです。
そのため、単純な理想は、単純な計画を立てます。
単純な理想は、単純に事が運ぶと考えるでしょう。
そして、単純に理想が実現すると思い込むのです。
しかしながら、あなたの掲げる理想は実現しません。
それは、どのような道を進むにしても、表層を過ぎれば深層に向き合うことになるからです。
深層には複雑さが存在しています。
道の始めは単純な理想と、単純な計画と、単純な考えで良かったのです。
しかしながら、道を進むためには、複雑さと向き合う必要が出てくるのです。
そこでは、今までの理想は通用しません。
そこでは、あなたは計画の変更を余儀(よぎ)なくされるのです。
多くの技術を学んだ画家ほど、単純な絵画を描き出します。
絵画を見る人にとっては、そこに多くの技術が隠されていることは隠されているのです。
多くの人は、単純な絵画を描くのに、複雑な技法は必要のないものだと思うかも知れません。
しかしながら、単純に描くからこそ、複雑な技法が必要であるのです。
技術に裏打ちされた単純でなければ、ただの雑(ざつ)となってしまうのです。
技術を以て描くのと、技術を以たずに描くのとでは、同じ題材であっても大きく異なるのです。
単純と複雑が合わさってこその価値なのです。
あなたは理想に単純さと複雑さを共生させておきましょう。
理想は実現しません。
あなたはその都度、理想を手放し、計画を立て替え、新たな理想を掲げなければならないのです。
柔軟性がなければ、古い理想の計画に固執(こしゅう)してしまうからです。
人生は単純そうに見えて複雑です。
人生は簡単そうに見えて難しいのです。
他者の技を見れば分かるでしょう。
画家は簡単に描きますが、そのように行うのは難しいのです。
簡単なものを理解するにも、難しい知恵(知識と技術)が必要です。
何も知らずに人生を行うのと、何かを知って人生を行うのでは違う結果をもたらすのです。
複雑さを所有する人は、それを所有しない人よりも、単純な絵画を描くことができるでしょう。
複雑さを所有する人は、より単純な人生を生きることができるでしょう。
あなたは複雑さを学びましょう。
自分にとっての難しいことを学ぶのです。
単純で簡単なことばかりを学んでいてはなりません。
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